バターリッチ・フィアンセ

「お揃い……」


実家では、お気に入りのマキシワンピを部屋着として着ていたけれど、このＴシャツも悪くない。

お揃いの服を着るのも、これから夫婦になるんだって実感が高まっていいかも……？


「似合いますか？　私にも」


胸の前に服を当て、昴さんに聞く。


「織絵は可愛いから何でも似合う。じゃあそれ貸して、会計してくるから」

「……は、い」


……なんか、軽いのよね。昴さんの言う“可愛い”って。

もちろんそう思ってもらえるのは嬉しいけれど、例えば彼のパン屋に来た女性客にも、同じことを言ってそう。



お店を出ると辺りはすっかり暗くなっていて、少しは気温も下がっているなと肌で感じながら昴さんの隣を歩いた。

店舗兼自宅までの道すがら、またもや初体験の“100均”なるお店に立ち寄り、生活に必要なものをすべて100円で揃えてから家に帰った。（さっきのお店と同じくらいはしゃいだ私は、途中から「うるさい」と昴さんに注意された）



「は～、疲れた。腹減った」



帰宅するなり伸びをして、そんな情けない声を出した昴さん。

そうだ、こんな時のために実家に居る間に少しは花嫁修業をしてきたのよ。

きっと今、その腕を発揮するときね？