バターリッチ・フィアンセ
お腹を満たしたあと、小さな洗面台で歯を磨いている途中で、私は鏡を見ながら昨夜の昴さんを思い出していた。
*
居間の小さなテーブルで牛丼を平らげるなり、「寝る」と宣言した彼。
その顔は本当に眠たそうで、収納から私の分の布団を出してロフトへ運ぶと、さっさと歯を磨いて一人床に就いてしまった。
時間は、確か21時ごろ。
まだ眠くないと思っていた私もシャワーを浴びた後はやることがなくなってしまったので、少し遅れて彼の隣にそっと寝転んだ。
……綺麗な寝顔。こうして黙っていれば、すごく素敵な男性に見えるのにな。
「あなたのこと、全然掴めません……昴さん」
寝ている彼に言っても仕方がないけれど、私はそう呟いて、瞳を閉じた。
まだ一日目だから、彼を理解できないのは当然と言えば当然なのかもしれない。
だけど、布団に隠れたお揃いのTシャツが、なんだかむなしい……
明日はお店を手伝うことになるだろうし、もう少し彼を知るチャンスがありますように。
私はそう願って寝返りを打ち、意外にも早く押し寄せてきた睡魔に飲み込まれたのだった。