バターリッチ・フィアンセ
「今どき珍しいですかね?」
昴さんはそう言いながら、何もできない私に代わって先頭の主婦に包装した商品を手渡した。
「そうでもないんじゃないかしら。逆に今の人の方が婚活パーティとかお見合いとか、忙しそうだもの。
……でもよかった、大恋愛の末に結ばれたなんて聞いたら、ここにいる皆さんが嫉妬したわよきっと」
クスッと笑いながら言った主婦だけれど、目は笑っていなかった。
彼女以外からも、“どうせ、愛のないお見合いで出会ったんでしょ”と代弁するような冷ややかな視線が、雨のように降り注ぐ。
……そう、か。昴さんはこの容姿だもの、きっとご近所の主婦たちの癒しの存在だったのね。
でも、だからって私の目の前でそんな嫌味を言わなくてもいいのに……
「そうですか、それは困ったなぁ」
「え?」
昴さんの発言に、主婦が首を傾げる。
「確かに出会いはお見合いですが、彼女のことは一目見て気に入りました。大恋愛は、これからするつもりなんです。
……な、織絵?」
「え、あの……」
そ……そこで私に振るんですか!?
庇ってもらったのはありがたいけれど、今の、全然本心からの言葉に聞こえなかったし……
ただうろたえる私に、昴さんは妖しく目を細め微笑みかけてきた。
……なんだか、嫌な予感。