バターリッチ・フィアンセ
「……まさかそこまで事が進んでいたとは」
食事中にする話でもなかったか、と少し申し訳なく思いながら、苦い顔をする達郎を見る。
ステーキ丼は、半分も食べ進んでいない。
「もう一緒に住んでるだなんてね……でもさ、一緒に暮らすうちに情とか沸いちゃうんじゃないの?
私としては、それを望んじゃうけどな」
美和は深刻そうにしながらも、パスタを頬張る。
こういう時、女の方が意外と冷静なんだなと、関係のないところで感心したりした。
「確かに、三姉妹のうち一番やりにくい相手だとは思う。ある意味全然お嬢様っぽくないし、泣きそうになっても唇かんで堪えてるし……くるみパンが一番好きとか言うし」
「……泣きそうって、もうなんかしてるワケ?」
顔をしかめる美和に、俺はわざと軽い調子で言う。
「別に暴力は振るったりしてないから、そんな怖い顔すんなよ。俺が与えたいのは精神的苦痛だから」
「そ、そっちの方が怖いんですけど……」
俺の言葉に二人とも“考え直せ”というような視線を送ってくるが、考え直す気があったら最初から七年も待ってない。
俺は二人の視線を無視するように、ミックスグリルのエビフライにさくりとフォークを突き立てた。