バターリッチ・フィアンセ


潤んだ瞳で昴さんを見つめると、彼はゆっくり私の上に覆い被さり、素肌の胸同士をくっつけて私の唇にキスを落とした。


最初は羽根のように軽く、けれど徐々に、私の深くまで侵すような激しいキスに変わる。

私の反応を試すようにあらゆる部分を撫でられると、抑えようとしていても甘い声が漏れてしまう。


「我慢しなくていいよ、織絵がドコがいいのか教えて欲しいし」


どこがいい……だなんて。

そんなのわからないくらい、昴さんに触れられれば全部が心地いいし、もしわかったところで、正直に言えるわけがない。

私は口を堅く結び、彼の言葉を無視した。


「……ふーん。そういう態度、ね」


それが、彼の中の引き金を引いてしまったらしい。

私に触れる彼の指はさらに意地悪く私を翻弄し、甘い痺れとともに私から考える力を奪っていく。



「……そろそろいい?」



汗ばんだ私の額にはりつく前髪を、優しく退けながら昴さんが聞く。


荒く乱れた呼吸を整えつつ、私は自分でもわからない答えを探して彼の瞳を見つめた。


昴さんは、どんな気持ちで私に触れてるの……?

このままひとつになることは、私たちにとって本当にいいことなの……?


けれど不安げな私の表情を、“初めてだから”という風に受け取ったらしい昴さんは、シーツの上で力を失くす私の手に自分の指を絡めてこう言った。


「最初は痛いかもしんないけど、すぐ慣れるから」



< 86 / 222 >

この作品をシェア

pagetop