バターリッチ・フィアンセ


「織絵」


花火が消えて、明かりはろうそく一本だけ。いっそう深くなった暗闇の中、昴さんが私を呼んだ。


「……はい」


もしかしたら、何か話してくれるのかもしれない――。

私はそう期待したけれど。



「キスしてもいい?」

「え……」

「……急にしたくなった」



急に……。それは嘘だろうと思ったけれど、理由があってもきっと教えてもらえない。

今、私にできることは……彼のしたいことを受け止める、ただそれだけだ。


「いい……ですよ」


微かな声で答えるなり、しゃがんだままの彼に強く肩を抱き寄せられて、唇を重ねられた。


「ん――――」


深いキスではなかったけれど、とても長いキスだった。

触れた部分が熱を帯びて、ジンジンと痺れてくる。


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