バターリッチ・フィアンセ
ゆっくり離れていった唇の熱がなかなか冷めない恥ずかしさから、私は残った線香花火の方に視線を向けると、彼に尋ねた。
「残りの、花火は……?」
「……あれ、キライだって言ったろ。やった振りしてバケツに入れとく」
そう言うと、昴さんは今さっきまでの切ない雰囲気を断ち切るように腰を上げ、花火の片づけを始めてしまった。
――私を好きでないのなら、どうしてキスをしてくれるんだろう。
どうして、私を甘やかな気持ちにさせるんだろう。
昴さんにとって、何かそこにメリットはあるの――?
繊細な光を放っていた線香花火のように。
単純な一言で片づけられない何か複雑な感情が、昴さんを突き動かしているような気がする……
それがどんなものなのか、私には見当もつかないけれど――。