ギャップ彼女 1
すごい…。


今、旅館前にいるのだが、見上げて唖然とした




だって…



私でも知ってる有名な高級旅館だったから…
まさか、こんなところに泊まれるとは思っていなかった。




というか、一泊いくらなのよ!!



悠斗の実家の経営する旅館だから、今回無料で泊まれるらしいが…



それにしても凄すぎる。



「どういう事だ?」




低い声の悠斗の声が耳に届いたので、視線を流せば今にも泣きそうな感じのスタッフが、何度も頭を下げていて…



『悠斗…どうしたの?』



私は、慌てて駆け寄った。




聞くところによると、私用の部屋が手違いで用意されていなかったらしい。(他の皆は全員一緒の部屋だという)。しかも、人気の旅館の為、空き部屋はすでにないという事らしい。



なんだ…そんな事?



悠斗、そんなに怒ったら今にも泣きそうなスタッフさんがかわいそうだよ?




『悠斗……私もさ、みんなと一緒の部屋がいいな。だって、一人で寝るの寂しいもん。
……だからさ、一緒に寝てもいい?』

「……っ!」



悠斗を見上げて言えば、なぜか真っ赤になる彼




『ダメ?』

「………分かった…」

『という事なので、部屋ひとつで大丈夫です』



私は、泣き出しそうなスタッフさんにニコリと笑いかけた。


「…本当に申し訳ありませんでした」



最後にもう一度謝ったスタッフさんは、部屋まで案内してくれた。









「俺の気も知らねぇで…」



小さく呟く声はリンには届かない。
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