ギャップ彼女 1
* * *


俺が、リンに会ったのは8歳の頃。


学校の宿題で「両親の働く姿について」という作文があったんだ。俺は宿題をこなすため、渋々両親の働く病院を訪れた。




「あら、翔ちゃんこんにちは。大きくなったわね。院長なら巡回中よ。多分。小児病棟の方だと思うわ」




看護師のお姉さんに教えてもらい、俺は小児病棟へと向かう。




小児病棟に着くと、何やらナース達がコソコソ話しているのが耳に入った。





「あの子、かわいそうにね。」

「相当ショックだったんでしょうね…。」

「まだ、目を覚まさないらしいわよ?」

「もう1週間でしょ?」

「あの事件、何やらもみ消しされたみたいよ?ニュースにならなかったでしょ?」

「やっぱりね。世の中本当怖いわね」




父親が視界に入ると、俺は父親の方へ足を運んだ。ちょうど病室に入る所だったのだ。




「翔、どうしたんだ?」



俺がここに来ることはほとんどなかったので、驚いている様子の父。



『宿題の作文の為…』と言えば「そうか」と柔らかく微笑んだ。





あまり笑わない父だったので、この時俺はびっくりしたのを覚えている。




しかし父はすぐに仕事用の顔になり、寝ている女の子の方へ行った。
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