不器用なアイ歌
どこもかしこも似ている海里の弟。だけど決定的に違うのは呼び方だった。海里はあたしのことを必ず ”鈴” と呼んでくてた。でも今、”鈴音” と呼んだ。

「……初めまして」

海里じゃないことは分かってしまった。彼があたしと初めて会ったことも……。

だからあたしは震える声を隠して気丈に振舞った。海里がいなくなった不安は同じだと思ったから。彼もまた、悲しみを抱えていると思ったから。

「なんで君みたいな人がこの学校にいるの?」

帰ってきた言葉は挨拶でもなんでもないどころか、あきらかにあたしに対して軽蔑するような態度。
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