不器用なアイ歌

ほんの小さな進歩と希望からあたしは

「あたし、なにがなんでも絶対に人気歌手になってやるから！」

そう、宣言していた。もちろん宣言だけでは終わらせない。そして、言葉だけでならいくらでも偽れることをあたしは知ってる。

だからあたしは大きく息を吸い込んだ。

「signal たくさんの言葉を交わした」

実力を知ってもらうのが一番だと思った。当然、技術も歌唱力も穴だらけだ。
それでも何か伝わるものがあるはずだと思い、伝えようとした。

「悲しみの色に染まらないで 必ず助けになるから」

アカペラで、しかも即興だった。音程にブレがあったり歌詞に矛盾があることは重々承知だ。それでもとてつもない満足感に満たされた。

音の余韻が残る中でしばらく呆然としていた2人は長すぎる間、何も言わなかった。