不器用なアイ歌
頭で理解していても、やはり処理が追いつかない。

「海里じゃ……ない?」

絞り出した声は震えていて、掠れていた。それでも聞かずにはいられない。

「彼は海里の……弟だ」
「おとうと……?」

いくらなんでも似すぎている。それに、兄弟がいるなんて聞いたことがなかった。あたしが存在すら知らなかったということがあり得るの……?

そう思えるほどに、海里はあたしに近い存在だった。

「君が鈴音?」

凛と響く声。この声は海里以外にはあり得ないと思っていた。だが、もし海里が居たならばきっと……きっとあたしは動けないままだっただろう。
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