年下の彼氏が優しい件
大谷美咲SIDE
ずっと食べたかったスイーツ。
それは、私が行くには少しだけハードルが高い店だった。
少し前に雑誌で見たそのスイーツは、
駅の近くのとあるバイキングの店でしか出していないのだそうだ。
しかも期間限定。
食べたいと思っていたけど、バイキングだ。
20代半ばでバイキングを一人で食べに行くなんて、恥ずかしい。
同僚を連れていくにも、同僚は家が遠いし、
友人を誘うにしても、予定が合わない人が多いし、今日会った友人には太るから、と断られた。
せっかく金を払うのだから、といっぱい食べてしまうから、だそうだ。
これは食べられない運命だろう、と思っていたから、友人に乗せられたとはいえ、
高野さんには感謝しなければならない。
女っ気がゼロだが、明日のバイキングがすごく楽しみだ。
高野さんも、綾子さんといろいろあった後だから、
スイーツだけの店じゃないし、
綾子さんのことを思い出すことも少ないと思う。
食事は、女の人がおごるのは男の人的には嫌だろうから、
バイキングに行く前にちょっとしたお詫びの品でも買おうか。
ベットに寝そべって、そう明日のことを考えていると、
次第に瞼が重くなってきた。
ふと意識が飛ぶ前に、
高野さんの顔を思い出した。