年下の彼氏が優しい件





家まで男の人を運び、昨日と同じようにベッドに寝かせた。

ベッドに寝かせるときに少し身体が痛んだのか、低く唸っていたが、これは仕方が無い。

こちらはなるべく痛くないように運んだつもりだが、やはりそこは女子と男子の体格差があると、多少力不足なことは許して欲しい。


『と、いうか…。如何に緊急事態であっても、こう見ず知らずの男の人を家に二回も上げるなんて、本当はあってはいけないんだけどな。』

しかし、警察が嫌だと言う彼は十分怪しいため、知人の男性に頼むわけにもいかない。

まったく、困ったものだ。




テキパキと昨日と同じように泥を落とし、傷を消毒し、手当てをしてから服を着替えさせる。
ここで誤解がないように言っておくが、決して下着は脱がしていない。
上半身裸なのは、打撲の方に気が向いてちゃんと見てもいないし。
だから不可抗力であり、私は決して痴女では…

「ん…」

『あ。目が覚めた?』

「あんた…」

『何処か痛いところはない?昨日よりも傷は酷くなっているけど。』

ジト目で男の人を見ると、男の人は一瞬まずい、といった表情をしたが、
私と視線を外して悪かった、と小さく謝った。

かなり滅茶苦茶な人だと思っていたが、やはり少し律義な人かもしれない。


『骨折はおそらくしてはいないけど、左腕にヒビが入っているかもしれない。ちゃんと病院に行くようにね。打撲と切り傷、擦り傷は手当てをしておいたから。』

何故切り傷なんてあるのか、と思うが、この傷は恐らくナイフかカッターで切られた後だ。
本当、彼は一体何に巻き込まれているのやら…


彼の体について説明をした後、救急箱を持って立ち上がる。

「どこにいくんだ。」

『お腹が空いたでしょ。ご飯作ってくるから、少し寝ていなさい。』

ちらりと彼に視線を向けてそう言うと、彼は小さく頷いた。

よかった、今日は安静にしてくれるらしい。
今日も綾子とか言って出て行かれたら、今度こそ本当に病院送りになっていただろうし。

私は安堵のため息をついて、キッチンに向かった。








そういえば、お粥でよかったかな。食べやすいほうがいいけど、お粥食べられるんだろうか。

作り始めたところで根本的なことに気がついた。
一度寝室に戻って彼に聞いた方がいいかもしれない。

エプロンを外し、再び寝室に向かう。


すると、彼は静かな寝息を立てて、また寝てしまっていた。


『…まったく。』

また寝室に戻ってきて良かった。
何がいいかは聞けないが、疲労を回復するには睡眠が一番だし、寝てくれてありがたいことは有難い。


仕方が無い。
アレルギーがあるかどうかもわからないし、取り敢えず作るじゅんびだけはしておいて、また目を覚ますのを待つか。


昨日同様、打撲による発熱を抑えるために男の人の額に冷えピタを貼る。

そして、手持ち無沙汰になったので、彼の服(昨日と同じ服だし、ドロドロに汚れていたから)を洗濯機に突っ込んでベッドの側で来週の授業準備をすることにした。




ホント、
厄介な拾い物をした



1時間目 完
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