王子様に恋愛中(仮)


「楓が街中にいるなんて珍しいね。買い物?」

つぐみがキョトンとした顔で聞いてきた。

「あー…人探し」

「人探し…?」

「…ああ。あいつ、泣いてた…」

やべ、口に出しちまった。

「もしかして…水瀬さん?」

え!?

なんでつぐみが蛍のこと知ってるんだ?

「楓…ごめん。あたし、余計なことしたかも…」

「?どういうことだ?」

俺はわけがわからないままつぐみの話を聞いていた。


「…というわけなの。本当にごめん」

なるほど。

蛍は俺に聞けなかったんだな…


思えば俺は、あいつがどれだけ俺を想ってくれてるか知っていたのに、何も話してやれなかった。

何もしてやれてない…

「つぐみ、話してくれてサンキュー。俺、もう少しあいつ探してみる」

つぐみにお礼を言って俺は駆け出した。

蛍に話したい…

隠さず全部、話したいんだ。

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