おまえのために・・・(短編)
「けど、ちょっと高すぎない?」
「呆れた。あーんなに、せっぱ詰まって、どんな手を使っても、裏の人格を消してくれって言っきたくせに」
少女は腕を組み、たった数分も前までは別人格だった青年の顔をマジマジと見た。
「……分かったよ」
ため息をつきながら、青年は内ポケットから小切手を取り出した。
「そうそう。
そんなところで、ケチケチしない。お金持ちなんだから」
青年は、肩をすくめる。
「そうでもないさ。
あいつの悪行の後始末をするのに結構、手間も金もかかってるんだよ」
優しげな甘いマスクの下で、地位と名声を何よりも大切に思っている青年は、ため息を吐いた。
「でも、本当はあなたもやりたかった事でしょう?」