トレモロホリディ
「それ以来、恋愛するのが怖くなったの…。

誰かと付き合うって、そういうことがきっと付いて回るでしょ?

だから、恋愛はしない。

もう味わいたくないもん。

あんな苦痛な思いは…」


ふとミナト君の方へ目を向けると、ミナト君は泣きそうな顔をして私のことを見ていた。


ハッとして、両腕に体重をかけて身体を起こした。


「なんか、ごめんねっ。

こんな暗い話して。

ミナト君、聞き上手だから。

つい色々しゃべっちゃって。

ホントにごめん」


何やってんだろう。


年下の男の子相手にこんな話。


雰囲気が重くなっちゃうよね。


ミナト君は一度大きく深呼吸をすると、うつ伏せになって枕に両手と顎を乗せた。


「ミナちゃん、あのね。

男がみんな、そんなヤツってわけじゃないから。

たまたま、相手が悪かっただけ。

ミナちゃんはむなしさだけが残ったかもしれないけど、本当に愛のあるそれは全然違うんだよ。

幸せな気持ちになれるから」


優しく、だけど力強く話すミナト君。


そう…なのかなあ。


私はもう、二度としたくないよ。


ちっともいいものだなんて思えない。


「ミナちゃんが優しいからそいつ、付け上がってたんだよ。

最低だよ、ホントに」


「ミナト君…」

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