トレモロホリディ
「最近、お前の事ばっかり思い出してたんだ。

そうしたら、すげー会いたくなって…」


先輩の意外な言葉に、心臓がドクッと跳ね上がった。


「他の女と付き合ってみて、よくわかった。

俺さ、やっぱミナがいい」


「は?」


先輩の言った意味がわからず、私は口をぽかんと開けた。


「美人と付き合うのは、最初はすげー刺激的なんだけどさ。

長く付き合っていくと、ほんとワガママで手に負えないんだよ。

別れる直前はケンカばっかで、マジで疲れたよ…」


なんだか頬がピクピクしてしまう。


そんなこと聞かされたって、知るかよって感じ。


私にはもう関係ないことだもの。


「他の女と付き合ってみて、いかにミナがいい子だったかやっと気づいたんだ。

お前は素直だし優しいし、家庭的だし。

すげー後悔した。

こんないい女、どうして手放したんだろうって…」


「はあ…」


随分勝手な言い分だよね。


やっぱり別れて正解だった。


「あの頃はさ、あんまり大事にしなくて悪かったよ。

これからは優しくするからさ、俺とやり直さないか?」


「はいー?」


なんだ?それ。


し、しし信じられない!


「む、無理です…」


この人は、なんで私が先輩の元を去ったか、全然わかってないんだ。


思わず顔を引き攣らせていると、先輩がガチャンと扉を閉めた。


え…?
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