トレモロホリディ
「ねぇ。

じゃあ、さ。

また、俺の部屋に来てくれる?」


ミナト君が甘えたような声を出す。


なんかミナト君って、あの茶虎の猫ちゃんと似ている気がする。


弟と同じ年齢なのに。


ゲイなのに。


恋愛対象とは違うのに。


そう言われても、全然イヤじゃなくて。


むしろ嬉しくて仕方がない。


「うん…。

私もそうしたい」


奇妙な関係ではあるけれど。


こうしていると心地良い。


「やった!

じゃあ、明日の朝からね」


ミナト君の嬉しそうな声に、私はクスッと笑った。


「はっ!っていうか今何時?」


「え…?

うわっ、やっべ。

完全に遅刻じゃん」


「行こ行こ!」


私とミナト君は大慌てで靴を履いて、部屋を飛び出した。


ふたり手を繋いで、いつもの道をひたすら走って行く。


すごくヤバイ状況なのに。


叱られるかもしれないのに。


私もミナト君も、


顔が緩んでしょうがなかった。


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