トレモロホリディ
「ミナちゃんが近くにいるとホッとするのってさ。

なんとなく俺とミナちゃんって、似てるからかなって思うんだ」


「え…?」


似てる…?


私とミナト君が?


あなたのようなイケメンと、このダサイ私が?


「あの…、どの辺りが?」


ハッキリ言って、似ても似つかないと思うんですけど。


ミナト君がうつ伏せになって、顔だけをこちらに向ける。


あぁ、色気がすごい…。


何をやっても絵になるから、ずるいよね…。


「実は俺もね。

かなりの田舎出身なんだ…」


え…?


ミナト君が田舎出身?


うそ…。


どこをどう見ても、洗練された都会の人って感じなのに…。


「俺が生まれたのはね、小さな漁師町だよ。

おやじは漁師でね、漁船に乗って漁に出てるんだ」


「えー、そうなの?

ミナト君のお父さんって、漁師さんなの?」


それは意外というか。


全くイメージと結びつかないなあ。


「俺の名前って『ミナト』でしょ?

さんずいに奏でるって書くんだ。

湊は船がいかりを下ろして止まる場所を指すんだけど。

そこって、人や物が集まる場所だからさ。

友達が沢山出来るように、物が沢山集まるようにって、おやじが付けてくれた名前なんだ。

いかにも漁師が考えそうな名前でしょ?」


クスッと笑う湊君。


「ううん。

すごく素敵な名前だと思う…」


そうなんだ…。


湊君の名前には、そういう意味があったんだね…。

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