トレモロホリディ
「ミナちゃんのミナは、どういう漢字を使うの?」


「ん?私?

私はね、美しいに野菜の『菜』って書くの」


「ふぅん。意味は?

まさか美味しい野菜、じゃないよね?

野菜料理が上手な良いお嫁さんになりますように、とか?」


「ふふっ。

そうだったら面白かったんだけど、残念ながら違う。

えっとね。

ばーちゃんが言うには、私が生まれた時、近所の菜の花畑が満開だったんだって。

その黄色があまりに鮮やかで綺麗だったから、そんなふうに育って欲しいって思って、“美しい菜の花”で美菜って名付けたらしいよ」


「美しい菜の花、かぁ」


「うん」


「やっぱりねー」


「えっ、やっぱりって?」


私の問いに、湊君がにっこり笑う。


「前に言ったでしょ?

美菜ちゃんは、黄色の花が似合うって。

やっぱり明るい色が似合うんだよ。

菜の花の色だったんだね」


ビックリして目がまん丸になった。


そうだ。


カーテンを買いに行った時。


確かに湊君はそう言ってくれた。


私、すっかり自分の名前の由来なんて忘れていたのに…。


そうだよ…。


ばーちゃんの願いは、菜の花のように明るくて、綺麗な女性でいて欲しい…だった。

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