トレモロホリディ
「俺、5歳年上の兄貴がいてさ。

その兄貴は高校を卒業した後、おやじ同様に漁師の道を選んだんだ」


へぇ…、そうなんだ。


湊君にはお兄さんがいるんだ。


「兄貴が漁師になったことで、おやじはホッとしたのかなー。

俺には、“お前は次男だし、こんな田舎に居ても仕事はないし、好きな道に進んでいいぞ”って、ずっと言い続けてたんだ」


高校を卒業する時って18歳だよね?


5歳年下ってことは、湊君は13歳。


なるほど。


その頃から言われていたんだね。


「好きにしていいぞって言われたら、気楽でいいじゃんって思うでしょ?

周りの友達からは、お前は自由でいいなぁって言われてたけど。

でも自由ってことはさ、全部自分で考えて自分で決めて。

その決めたことに、自分が責任を持たないといけないんだ。

親に言われた通りにするわけじゃないから、誰にも文句は言えないし。

ある意味甘えられなくて、大変だったりするんだよな」


そう言って、湊君はふぅと息を吐いた。

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