トレモロホリディ
「好きにしろって言われても、一体何がしたいのかわからないまま、気がつけば高3になってて。

俺、大学へ行くほどの頭はなかったしさ、高校が斡旋してる企業に高卒で就職したんだ」


「えー、そうなの?」


湊君って会社員だったんだ。


今の風貌からはとても想像が出来ないけど。


「このアパートの近くに、大きな事業所があるでしょ?

あそこが俺の元職場」


「え…、あの24時間稼働しているところ?」


ほなみにも、あそこの会社の社員さんが大勢来てくれるけど。


「そう。あの会社の寮に入ってたんだ。

交代勤務でさ、夜勤もあったよ」


「じゃあ、以前はあの紺色の作業服を着ていたってこと?」


「うん」


えーっ?


なんか似合わなーい。


いや…。


湊君なら何を着ても似合うかな。

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