トレモロホリディ
「いっぱい話したら眠くなってきちゃった。

俺、ここんとこちょっと寝不足で…。

やっと寝られそう」


そう言って、ふわぁと可愛いあくびをする湊君。


「ねぇ、美菜ちゃん。

もうちょっとこっちに…」


「え…?」


おいでおいでと招き猫のような仕草をするのは可愛いけれど、一体どういう意味?


「手、貸して…」


「手?」


よくわからないけど、言われるまま湊君の方に近づき、ゆっくり右手を伸ばした。


そうしたら、湊君がその手を両手でガシッと包み込んだ。


「へへっ。

このまま寝てやる」


「はい~?」


「じゃあねー、おやすみー」


そう言って湊君はにんまり笑いながら目を閉じた。


その姿に呆然としてしまう私。


ま、まじっすか…。


なんだかよくわからないまま片手が固定されてしまい、私は空いた方の手で頭をポリポリと掻いていた。


この子、ホント甘えん坊っていうか、なんていうか。


やっぱり猫っぽい。


思わずクスッと笑った後、私もそっと瞼を下ろした。


そうしたらすぐに眠気が来て。


夕方まで一度も目覚めずに、


ぐっすり眠ってしまったのだった。

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