トレモロホリディ
そうこうしているうちに、彼女はダイエットをするなんて言い始めて。


別に太ってないのにさ、こんなんじゃダメだって言い張るんだ。


俺は必要ないって思うんだけど、確かにテレビに出る人は細い人が多いから、それも必要なことなのかなって。


でも、食事を減らして不健康になるのだけはやめて欲しかったから。


だからせめて筋トレとか、ヨガで落として欲しかったんだ。


俺、必死に調べたよ。


どうやったら綺麗に痩せるかってね。


俺が綺麗な身体の線を作る方法に詳しいのは、その時に得た知識ってわけなんだ。




彼女の夢に協力するのは楽しかったよ。


でも、自分の夢は何も見つけられないまま、月日だけが流れていった。


彼女は高校を卒業したら、当然東京へ行くと言っていて。


俺は大学に行く頭もないし、これと言ってしたいことが何もなかったから。


だから、彼女と一緒に東京へ行こうってそう思った。


そんな動機で就職することを決めて、あの事業所で働くことになったんだ。


俺は寮に入り、彼女はそこからそう遠くないところでひとり暮らしを始めた。


初めての都会暮らしと、慣れない仕事で戸惑うことは多かったけど。


それでも彼女が近くにいるから、俺はなんとか頑張って来れたんだ。

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