トレモロホリディ
「じゃあ、美菜ちゃん。

もしね、何でも希望が叶うとしたら、どこの部署でどんな仕事がしてみたい?」


「え?」


「もしもの話だから、思いっきり大胆に選んでもいいよ。

かっこいい秘書でもいいし、なんなら社長にだってなってもいい」


思いっきり大胆に…か。


「社長はさすがにないけど。

そうだなあ…」


色々とイメージしてみる。


出来るわけないだろうけど、もし何にでもなれるのなら…。


あ、そうだ。


「私、受付になりたいな」


「受付?」


「ビルの1階や、会社の入口にいる女性」


「あー、いるよね。

そっかぁ。

美菜ちゃんは受付になってみたいんだね」


そう言うと湊君は、ゴロンと仰向けになった。


「就職活動をしているとね、色んな会社を訪問するでしょう?

そうすると、最初に必ず受付の女性と話をするの。

笑顔が爽やかで優しくて、洗練されていて。

企業の顔って感じがしたなあ」


素敵な人を何人も見た。


もしなれるなら、一度くらいなってみたいものだ。


「まぁ、私なんて綺麗でも何でもないから、どんなに切に希望したところで採用されるわけないんだけどねー」


書類だけで落とされたりしてね。


その可能性は大いにあるな…。
< 233 / 500 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop