トレモロホリディ
「美菜ちゃん」


「ん?」


「昨日俺に言ったこと、覚えてる?」


「えっ。何か言ったっけ?」


「言ったよー。すごく大切なこと」


大切なこと?


えー…、何だっけ?


全然思い出せないんですけど。


うーんと考え込んでいると、湊君が身体を私の方に向けて、ニッと口角を上げた。


「試してみないとわからないって…」


「あ…」


言った。


確かに言った。


「同じセリフを、俺が美菜ちゃんに言ってあげる。

採用されるかされないかは、試してみないとわからないよー。

そうでしょ?」


湊君がにっこり笑うから、私もつられて笑ってしまった。


「やる前から自分で無理だって決め付めるのはダメなんだね。

今日、それを学んだ気がした。

美菜ちゃんのお陰だよ。

だからさ、美菜ちゃんにも、それを体感して欲しいな」


う~ん、確かに…。


あれだけ湊君に力説しておいて、自分じゃ何もしないなんて。


ちょっと、人としてずるいかもしれない…。

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