トレモロホリディ
「ねぇ、美菜ちゃん…」


湊君が、澄んだ声で私の名前を呼ぶ。


「ん?なあに?」


笑顔でそう応えると、一瞬何か言いかけて、湊君は口をつぐんでしまった。


「ううん…。なんでもない…」


そう言うと湊君は、止めていた手を再び動かして、私の頭を撫で始めた。


何?


今、なんて言おうとしたの…?


湊君が、何か言いかけてやめるなんて珍しい…。


湊君が話してくれることなら。


私は漏らさずに全部聞きたいのに…。


どうしてやめちゃったのかな。


何か大切な話のような。


そんな気がするのに…。



だけど…。



お願い、話して…なんて。



勇気がなくて。



言えそうもない…。


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