トレモロホリディ
細長く綺麗なその手が、


今度は私の頬をそっと包み込む。


優しくて、柔らかい感触だ。


湊君…。


湊君にこんなことされたら、


なんだか訳もなく


泣きたくなってくるよ。


涙がまた出ないように、目をぎゅっと閉じる。


だけどそうすると。


湊君が触れている場所に、私の全神経が集中してしまう。


湊君に聴こえているんじゃないかと思うくらい。


心臓が大きな音を立てるから。


もう、胸が苦してたまらないよ。


この状況、


一体どうしたらいいの?


一人でパニックになっていたら…。



湊君の親指が、




私の唇を




そっとなぞった。

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