トレモロホリディ
「この猫ちゃん、名前は?」


「名前?

そんなのつけないよ」


「え、どうして?」


私の問いに、ちょっと口を尖らせるミナト君。


「名前なんか付けたら、情が湧いて手放せなくなるじゃん」


「あー…」


私はふと猫ちゃんの喉を優しく撫でてみた。


すると猫ちゃんは喉を鳴らして、気持ち良さそうに目を閉じた。


うーん。


確かにこれだけ可愛いと、手放す時相当寂しいかも?


「驚かせてごめんね。

洗濯物干してる隙に、窓から飛び出しちゃったんだ。

でも、向かった先がミナちゃんの部屋で良かったよ。

他の部屋だったら、やばかったから」


ミナちゃんと呼ばれて、ちょっとドキドキした。


穂波さんに呼ばれて、同時に返事をしたくらいだもの。


一発で覚えちゃうよね。


私だってミナト君の名前、すぐに覚えたし。

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