トレモロホリディ
「じゃあ、そろそろ部屋に戻ろうかな?」


そう言って、両手を差し出すミナト君。


私はハッとして、猫ちゃんを手渡した。


その時だった。


ギュルルルルルーーーと、妙な音が玄関に鳴り響いた。


「え…?」


なんだ?今の音。


私が目をぱちぱちさせていると、ミナト君の頬が少しピンク色に染まった。


「やべ。お腹鳴った」


猫を撫でながら、ミナト君がはにかむ。


「だってミナちゃんの部屋、なんか美味しそうな匂いがするからさぁ。

何の匂いかな?これ」


匂い?


「あぁ、えっとね。

さっき親子丼を作って食べたのよ」


「親子丼っ?」


ミナト君があまりにビックリしたような声を出すから、こっちがビックリしてしまった。


「親子丼かぁ。いいなあ…」


な、なんだ?


その物欲しそうな顔は。


え、もしかして…。




食べたいのかな?
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