トレモロホリディ
「壮真君。

私、バイト中だから、もうほなみに戻るね。

ここで、お酒を飲むわけにもいかないから。

お邪魔してごめんね」


私はガタンと席を立った。


「あ、そうだ。

これ、良かったらスタッフのみんなで食べてもらえないかな?

沢山作り過ぎちゃって。

一人じゃ食べきれないし」


そう言って紙袋を差し出した。


「美菜ちゃん、これ…」


「うん…。

本当は湊君に食べて欲しかったんだけど。

もう、間に合わないから…」


あとちょっとで、12日も終わるしね。


「あ、それとこれ…」


「何?」


「プレゼント。

そこの段ボールに一緒に入れてくれる?」


湊君のために用意したプレゼント。


花柄の包装紙がとても可愛い。


「どうしてこの中に?

直接湊に渡しなよ」


壮真君の言葉に、私は首を横に振った。


「いいんだ。もう…」


私からのプレゼントは、


ここに山積みされたプレゼントと同じ価値だと思うから…。


ここに置いておくのが、一番ふさわしい。


名前も書いていないし。


誰からのプレゼントかも、わからないだろう…。

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