トレモロホリディ
「美菜ちゃん…」


「ん…?」


「本当にそれで、いいんだな?

湊の事、諦められるんだな?」


「うん…。もう、いいの」


「じゃあ、さ…」


1メートルほど距離のあった壮真君が突然グッと距離を詰め、私の目の前に大きな影が出来た。


もうとっくに別の階へ行ってしまったエレベーターのドアに壮真君が左手をかける。


湊君に負けず劣らずの綺麗な顔が次第に近づいて来て、私の顔の15cm前でピタリと止まった。


「俺と付き合う?」


「え…?」


「前に言ったよね。

もし告白がダメになった時は、

俺が引き受けるって……」


「あ…」


た、確かに言っていたけど。


でもあれって、冗談じゃなかったの?


「少なくとも俺は。

美菜ちゃんのこと、充分恋愛対象だよ?」


え…?


どういうこと?


壮真君、一体何言ってるの?


「可愛いって思ってるよ。

こんな素直でいい子、今まで出会ったことないし。

俺は美菜ちゃんさえ大丈夫なら、

付き合いたいな」




そう言って頬を赤らめる壮真君に、ゴクッと息を呑んだ。


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