トレモロホリディ
「俺は美菜ちゃんを、そういう対象で見てるよ。

好き…だし。

だから、さ。

自分には全然価値がないみたいな、そんなこと言うなよ」


「壮真君…」


「これ」


「ん?」


「俺の名刺。後ろに番号あるから」


胸ポケットからまるで手品のようにスッと取り出された名刺が、私の唇にそっと押し当てられる。


「いつでも電話して。

俺…、本気だよ?」


唇に当たる名刺が小刻みに震える。


どうしよう。


胸が…。


「言っとくけど…。

ガチの告白だからね?

失恋した子につけこんでヤろうとするような、そんなヤツとは違うから…」


壮真君…。


「俺は気長に待てるし。

もうこれからは湊に遠慮しなくていいわけだしね」


そう言ってにっこり笑うと、壮真君は私のバッグにその名刺を入れ、


身体を起こし、エレベーターのボタンを押した。


すぐにエレベーターの扉が開いたから、私は中へと無言で入った。


「バイト頑張って。

あとさ、どうしてもつらくなったら、すぐ連絡して」


優しい笑顔でそう言ってくれる壮真君に、私は口角を上げるのが精一杯だった。


「じゃあ、また…」


手を振る彼にうんと頷いた途端、ドアはスッと閉まってしまった。

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