トレモロホリディ
「それより、湊。

めぐるちゃんの様子は…?」


仕事を休んでまで看病してたんだからな。


あんまり体調が良くなかったんじゃないだろうか。


俺の問いに、湊の動きがピタリと止まる。


うつむいたまま、湊は静かに口を開いた。


「熱自体は、ただの風邪だったんだけど。

病院に行った時に、ちょっと医者から言われたことがあって…」


「医者に?

え…、なんて?」


なんかイヤな予感がするよな。


まさか重い病とか?


うわー。


自分で聞いておいて、聞きたくねー。


「それが。

アイツ…。

拒食症の疑いがあるって…」


「きょ、拒食症…?」


思ってもみなかった言葉に、目がパチパチしてしまう。


「あくまで、まだ疑いの段階だけど…。

身長は162cmあるのに、体重が30kg台だから、ちょっと細過ぎるって…」


「30kg台って…」


「昔から、ものすごく体重を気にする子だったんだ。

全然太っていないのに、痩せなくちゃ…が口癖だったし。

事務所と契約が決まって、余計拍車がかかっているのかもしれない…」


なるほど。


太ると仕事がもらえないとか、そういう恐怖心があるのかもしれないしな。


「少なくとも、俺と付き合っていた頃は、そこまで細くはなかった。

運動で痩せるように、いつも話してたから…」


「湊の監視が無くなった途端、無理なダイエットに走ったと?」


俺の問いに、湊はうんと頷いた。

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