トレモロホリディ
食事も終わり、一緒にお皿を洗って片付けると、また二人で部屋に入った。


あと一時間もしたら、帰らないといけないな…。


ベッドにもたれて座る俺の隣に、めぐるが寄り添って来る。


手をそっと握られた。


「なんか…。

ちょっとしか会えなくて寂しいよ」


「ん…。ごめんね…」


「やっぱりもっと近くにいてほしいな。

こっちに、引っ越せないの…?」


「んー。

そうするにしても、俺も仕事探さないといけないし。

今すぐってわけには…ね」


本格的に探すなら、こんな髪色しているわけにもいかないし。


夜の仕事をしながら就職活動って、結構大変だと思う。


大体、今こういう業種の仕事をしているのに、いきなり普通の企業が受け入れてくれるのかなって不安もあるし。


時間は、かなりかかると思う…。


「帰らないで~。さみしいよ~」


「また、来るから…」


「一週間なんて、待てない~」


グズグズと泣きながら、めぐるが俺にしがみついてくる。


めぐるは昔からこうだった。


帰り際になると、途端に甘え始めるんだ。


高校の時はどうしようもなかったけど。


東京に出てからは、帰り際に必ず抱いてたっけ。


そうしないとおさまらないから。


多分、これって。


あのサインだよね…。


一年半ぶり…かぁ。


とりあえず肩を抱いてやった。

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