トレモロホリディ
「ね、ねぇ…」


「ん?」


「もうちょっと太った方が良くない?」


「えっ、どうして?」


どうしてって。


相変わらずだな…。


「細過ぎると思う。

事務所に痩せるように言われてるの?」


「そういうわけじゃないけど。

事務所にね、私と同い年で同じ身長の子がいるの。

その子には絶対負けたくないのよ」


「負けるって…。

体重軽ければ勝ちなの?」


「二の腕とウエストの細さだけは負けたくない!」


うーん。


意味がわからない。


「男って、多少ふくよかな方が好みだよ?

胸だって…ね?」


大き過ぎるのはいやだけど。


適度にあって欲しいもん。


「胸はいくらでも詰めて誤魔化せるけど、足の細さは誤魔化せないでしょう?」


「そ、そうだとしても。

あんまり細いと体力落ちちゃうし、バテないかな?」


「うーん。

確かに風邪はよく引くかな…?」


「この前の高熱だって、不健康なところから来てるんじゃないのか?

しっかり食べて運動した方がいいよー」


「だって、運動は嫌いなんだもの。

食事制限した方が、てっとり早く痩せられるからいいのー」


「なっ。

健康が一番だろう?

病気になったんじゃ、仕事どころじゃないじゃん」


「あーもうっ!

湊はそうやって説教ばっかりする。

だからいやなの!」


え…?

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