トレモロホリディ
「帰る…」


スッと立ち上がった。


身体中に力が入って、熱くて熱くてたまらない。


このままじゃひどいことばかり言ってしまいそうだ。


早くここから離れないと…。


「やだ…。待って!

まだ時間あるでしょう?

帰らないで!」


震える声で、俺にしがみつくめぐる。


俺の後頭部に両手が回り、唇を重ねられた。


だけど…。


俺は抱きしめなかった。


そうやって


身体だけ重ねて、


うやむやにするのはもうイヤだ。


10代の頃は


それさえあれば、


なんとなく愛し合ってるような気がしてた。


でも、そうじゃない。


心が通じ合ってなきゃ、


そんなもの何の意味もない…。


むなしいだけだ。


「ごめん…、めぐる…。


今日は帰らせて…」


「湊…」


「頭を冷やしたいんだ。


頼むよ…」



俺がそう言うと、


めぐるはスッと力なく


手を下ろした。



俺はそのまま



めぐるの顔も見ないで、



何も言わずに部屋を出た。



エレベーターに乗り



地上に出ると、



外はもう



暗くなっていた。


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