トレモロホリディ
電車に乗り込むと、通勤客でかなりごった返していた。


なんとか中の方に入って手すりにつかまると、


流れていくビルの景色をボーッと眺めた。


なんだか…


俺の全てを否定された気がした。


高校の頃から、


俺がめぐるにして来たことって、


単なる自己満足だったのかも。


アイツにとっては迷惑でしかなくて、


何の意味も持たなかったんだ。


俺がついてなきゃダメだ、なんて…。


勘違いだったんだ…。


アイツが望んでいたのは、


連れて歩くのに恥ずかしくない程度の容姿と、


疲れた時に愚痴を聞いてくれて、


優しく抱いてくれる都合の良い男。


多分、それだけ…。



慣れない都会になんか行かずに、


地元で俺も 


漁師になればよかった。


でも


おやじは多分、


細い俺に漁師は無理だと思っていたんだろうな。




俺って一体…




何なんだろう…?



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