トレモロホリディ
その時だった。


玄関のドアの向こうから


コツコツという甲高い靴音が聴こえて来た。


コツコツ?


コツコツって、男の靴音じゃないよね。


女性のヒールの音、だよね?


何かのセールスかな…?


じっと耳を澄ましていると。


ガチャンと扉を開ける音が聞こえた。


こ、これは…。


隣の部屋のドアの音だ。


み、美菜ちゃんが帰って来たんだ。



会える…。


今なら会える!



足がもつれて転げそうになりながら、バタバタと立ち上がる。



手には色えんぴつと紙をぎゅっと握りしめたまま



慌てて靴を履くと



俺は自分の部屋を勢い良く飛び出したのだった。


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