トレモロホリディ
呼吸が整うとすぐに、湊君が私の背中を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめてくれる。


そう、これ…。


私が欲しかったのはこれなんだ。


終わったら即効どこかへ行ってしまうあの寂しさ。


あれが大嫌いだった。


でも、湊君はそんなことしない。


やっぱり…優しい…。


「美菜ちゃん。

どうだった?」


ど、どうって…。


さっきの私を見たら、そんなの聞かなくてもわかるはずなのに。


「イジワル…」


ボソッと呟いて湊君の胸に顔を埋めると、湊君がクスッと笑った。


「ごめん。

美菜ちゃん、すげー可愛かった。

俺、幸せだったよ。

美菜ちゃんは?」


そんなの…。


「私も嬉しかった…。

すごく、幸せ…」


「ん。良かった…」


本当に好きな人となら


こんな気持ちになれるんだ。


湊君がそれを教えてくれた。


もう他の人なんて、考えられないよ…。


「そうだ、美菜ちゃん。

せっかくの休日だし、これから一緒に物件見に行こう」


「えっ、ホントに?」


「早いほどいいでしょ?

美菜ちゃんの通勤が大変だと、会える時間が限られちゃうから…」


うーん、確かに。


新しい仕事が始まってからというもの、隣に住んでいても、湊君の気配って全然なかったもんね。


「じゃあ、出かける準備しようか」


「うんっ」


こうして私と湊君は、二人で住む部屋を探しに仲良く出掛けたのだった。

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