トレモロホリディ
そして迎えた金曜日。


私と湊君は朝の通勤電車に揺られていた。


「美菜ちゃん、すごいね。

毎朝こんな満員電車に乗ってるんだ」


「そうだよ」


毎日のことだし、学生の頃も経験があるから、慣れていると言えば慣れているけど。


今朝はこうして湊君が一緒にいてくれるから、通勤時間が楽しいな。


「痴漢とかには遭ってない?」


「うん。そういうのは一度もないかな」


私ってなぜか、昔からそういうのには遭遇したことがないんだよね。


「スカートだし、心配だな」


「大丈夫だよ。そんなに心配しないで」


「う~ん…」


「それはそうと、湊君。

緊張してる?」


「ん?」


「久遠社長に会うこと」


「あー…うん。さすがにねー。

初対面だし。

俺、金髪だけどいいのかな?」


「それは話してあるよ。

そんなこと全然問題ないっておっしゃってたよ」


「そっか。

それなら、ちょっと安心した」


湊君はホッと息を吐いて口角を上げた。

< 455 / 500 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop