トレモロホリディ
「彼の絵を見せてもらったけど、すごくいいね。

作風が変に偏ってないし、柔軟性がありそうだ。

センスも良くて、すごくお洒落だしね。

でも、一番すごいと思ったのはね。

これ、彼の人柄なのかな?

どの作品にも彼の優しさが溢れているんだ。

あれは多くの人に好まれる絵だねー」


「そうなんですか?」


私も湊君の絵が大好きで、すごく素敵だと思っていたけど。


久遠社長がそう言ってくださると、やっぱりそうなんだって確信が持てるなあ。


多くの絵を観て来られた社長がおっしゃることだから、説得力があるものね。


「そこで提案なんだけど…」


久遠社長の言葉に、ゴクッと息を呑んだ。


「彼に、作品を描いてもらいたいんだ…。

ウチの会社のために」


「え…?」


「澤井さんも知ってると思うけど、12月に青山にカフェレストランがオープンするでしょ?

その店舗の絵をね、彼に任せてみたいんだ。

枚数は全部で3枚。

結構大きな絵にはなるんだけど」


うそ…。


湊君の絵が、カフェレストランの壁に飾られるの?


しかも、3枚も。


「彼ね、引き受けてくれたよ。

お店自体はまだ完成してないから、お店のコンセプトやレストランのイメージ図はさっき渡しておいた。

彼も仕事をしながらの作業になってしまうから、大変だとは思うけど。

その分、報酬は弾もうと思ってるんだ」


すごい…。


湊君に絵の仕事の依頼が来るなんて…!

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