トレモロホリディ
それから10日が経ち…。


ついに3枚の絵が完成した。


そのことを久遠社長に連絡すると、


なんと、絵を直接マンションまで見に来ると言われてしまった。


大きな絵を3枚も運ぶのは大変だし、


万が一ボツになった場合その移動が無駄になってしまうからだ。


同居していることは秘密だったのに…。


社長が来られている間だけ私が隠れてもいいけど。


部屋の雰囲気で絶対に一緒に暮らしているとバレてしまう。


もうこうなったらジタバタするのはやめよう…。


それよりも絵だ…。


どうか社長に気に入ってもらえますように。




そして迎えた土曜日の朝。


私と湊君は、部屋の掃除をしまくっていた。


とにかく落ち着かなくて、二人で雑巾を持って部屋中をウロウロし、窓拭きまでしてしまうのだった。


久遠社長との約束は11時。


「ねぇ、美菜ちゃん。

そろそろ、来られるよね?」


「うん…。

会社の人とステーションワゴンで来るっておっしゃってた」


「車かぁ…」


もし気に入った場合、絵を持ち帰るためなのだろう。


「あぁ…ドキドキする」


不安そうな顔の湊君。


大丈夫だよって励ましてあげたいけれど、私も全く余裕がなかった。


その時だった。


ピンポーンとインターホンが鳴った。


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