トレモロホリディ
「き、来たっ」


小さな液晶画面に映っているのは、まさしく久遠社長だ。


当たり前だけど、本当に来たっ!


ゴクッと喉を鳴らした後、湊君がボタンを押し、「はい」と返事をした。


『久遠です』と社長の声がスピーカー部分から聞こえる。


「どうぞ」


そう言って湊君は、1階の自動ドアを解錠した。


私と湊君はバタバタと玄関に走り、横並びに立つと、前髪や衣類を整えながら久遠社長が来られるのを待った。


しばらくすると、ピンポーンと玄関のインターフォンが鳴り、


私と湊君は一度顔を見合わせて、ガチャンと扉を開けた。


「こんにちは」


「こ、こんにちは。

遠いところ、ありがとうございます」


爽やかに笑う社長に、湊君がぺこり頭を下げる。


「こっちこそ、休日なのにごめんね」


社長は今日もスーツ姿だ。


お休みの日でも、こうしてお仕事をされているのかな。


「どうぞ」


湊君が促すと、社長はお邪魔しますと言って、リビングへと入って来られた。


私はリビングでウロウロしていたサスケを抱っこし、二人の邪魔にならない場所に立った。

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