トレモロホリディ
「あっ、そうだ。

食事が運ばれる前に…。

今、少し時間をもらえないかしら?

遠野君に話があるの」


突然の人事部長の言葉に、きょとんとする私と湊君。


「社長。

例の話、今してもいいですか?」


「あぁ、もちろん」


「じゃあ、ちょっと失礼して」


そう言って、人事部長が湊君の斜め前の席に座った。


人事部長から湊君に話って、一体なんだろう?


「先月の終わりだったかな?

遠野君、このお店の様子を見に来ていたでしょう?」


「あ、はい…。

絵のイメージを掴みたかったので、見学させていただいたんです」


「その時にね、私、感心しちゃったの」


「感心?」


人事部長が湊君に感心した?


どういう意味だろう?


私と湊君はコテンと首を傾げて目を見合わせた。



「あなたのセンスに!」

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