トレモロホリディ
「え…?」


人事部長の意外な言葉に、湊君が目を丸くする。


センス…?


え…、どういう意味なのかな?


「あの日、ここの店長とうちのスタッフが、店内のディスプレイで悩んでいたでしょう?

色々試してみるものの、どうしても決まらなくて。

その時、あなたがさりげなくアドバイスしてくれたでしょう?

その通りにしてみたら、一発でバッチリ決まったじゃない?

私、その様子を見ていたの」


「えっ、そうなんですか?

す、すみません。

出過ぎたマネをしたかなって、反省していたんです。

なんとなく思ったことを、つい口にしてしまって…。

本当にごめんなさい」


ぺこり頭を下げる湊君。


「ううん。

責めてるんじゃなくて。

私はね、そのセンスを買いたいって思ってるのよ」


「え…?

か、買うってどういう意味ですか…?」


湊君が目をパチパチさせる。


「遠野君。


ウチの会社に転職する気はないかしら?」

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