トレモロホリディ
「遠野君」


社長が口を開く。


「はい…」


「僕はね、これからもキミに絵を描いてもらいたいと思っているし。

また機会があれば、キミの絵を新規店舗に採用したいと思ってるんだ。

でも、バーの仕事をしながらだと、絵を描くのはなかなか大変なんじゃないかな?」


「うー…ん。

確かにそうですね…。

夜起きているので、昼間の集中力はかなり落ちてますし…」


「ウチの本社は完全に土日祝日は休みだし、年間休日も多いよ。

絵を描くにはなかなか良い条件だと思うんだけどね」


社長、湊君をスカウトする気満々だ。


「それより何より…」


社長の顔が急に妖艶になる。


そのあまりの色っぽさに、湊君も私もゴクッと喉が鳴ってしまう。


何より…、


何なんだろう?



「澤井さんと一緒にいられる時間が、


格段に増えるんじゃないかな?」

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