トレモロホリディ
ガチャンと扉が少しだけ開く。


中が薄暗いせいで住人の顔はよく見えない。


私はドアの隙間に少しだけ顔を近付け、のしを付けたティッシュの箱を住人に見せた。


「今日、隣に引っ越して来ました澤井(さわい)と言います。よろしくお願いします」


そう言ってティッシュの箱を手渡そうとするけれど、ドアガードをしたままの扉にはこの分厚い箱は通りそうにない。


「あのこれ、つまらないものですけど」


何とか通らないものかとドアの隙間にティッシュの箱を押さえ付けていると、なぜかふぅというため息が聞こえた。


住人は一度扉を閉めると、今度はガチャンとドアを広く開けた。


「え……?」


思わずゴクッと喉を鳴らした。


それも、そのはず。


私の目の前に立っていたのは、


金色の髪と耳のピアスがキラキラと眩しい、


それはそれは派手な男の人だったから。
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