トレモロホリディ
ミナト君ってこんなにかっこいいのに、全然それを鼻にかけていないからすごいと思う。


思えば、初めて会った日もそうだった。


アパートの人全員にティッシュを配ろうとしていた私を、馬鹿にするどころかやめた方がいいって言ってくれたもんね。


優しい人、なんだね…。


「ねぇ、ミナちゃん」


「ん?」


「今日ってバイトお休みなんでしょう?」


「うん、そうだよ」


明日の夜まで何して過ごそうかなあ。


「だったらさ、俺の職場に遊びに来ない?」


「は?」


「飲みにおいでよ。サービスするし」


「え、あ、いやあの。

いつか穂波さんと行く約束してるから、またその時にでも」


「え~!

穂波さんの休みを待ってたら、いつになるかわからないよ~。

今夜にしよ、今夜~」


「で、でも私、居酒屋くらいしか行ったことなくて。
どうしていいかわからないよ」


大体、こんな服で行ってもいいのかさえわからない。


「大丈夫だよ。俺がいるし」


「で、でも…」


「ね、決まりっ」


うそーーー。


マジで~?


そんなこんなで。


一緒に買い物をするだけでもビックリだったのに。


ミナト君に強引に押し切られて、私はミナト君の仕事場に遊びに行くことになってしまったのだった。

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